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多世代住宅

  近年の生活習慣の変化や住宅建築の発達に伴い、住み方にも新しいトレンドが現れてきました。そのひとつ、多世帯住宅について考えてみましょう。

多世代住宅とは

  多世帯住宅とは、いくつかの世帯が一つの屋根の下で共同生活をする住宅のことです。二世帯住宅は、その最も一般的な例といえます。
  それぞれの世帯がもっている住まいへの要望をうまく取り込んで、暮らしやすい住まいづくりをめざしたいものです。

メリット&デメリット

  多世帯住宅になるきっかけは、経済的な問題や子どもの入進学などを理由に、子世帯から親へ話を持ちかけるケースが多いようです。親にとっても悪い話ではないので、実現する場合が多いのです。
  多世帯でのメリット・デメリットの問題は、主に経済的な側面と、共同生活による精神的な面とが言われています。

経済面

  経済的な面でのメリット・デメリットは、主に次の5つです。

注)【親 】:親世帯の考え方 【子 】:子世帯の考え方 記載のないものは、親子共通の考え方

  メリット デメリット
土地 親がすでに土地を所有している場合、その土地に住宅を建てることで資金を少なくできる【子】 借地の場合、地主に相談する必要がある
建築資金 「親子リレーローン」など、金融機関で幅広い資金調達ができる 共有スペースが多ければ、建築コストは別棟で2棟建てるより安く抑えることができる
工事のお茶菓子などをはじめ、諸費用にあたるコストは2棟建てるより安く抑えることができる

住宅資金贈与の特例を使うと、頭金を増やしてローンを滅らすことができる【子】
借りる金額が増やせる反面、返済の負担が増え、返済期間が長くなることもある。しっかりとした将来設計が必要

新たなローンは少なからず不安に感じる【親】
登記/税金 固定資産税などを減額できる(条件有り)

住宅購入目的の資金贈与については、住宅資金贈与の特例により贈与税が減額される
他の兄弟とあらかじめ話し合っておかないと、将来、相続(相続税)の問題が生じる可能性もある
維持費 住まいのメンテナンスや庭の手入れにかかる費用を2軒分より安く抑えることができる 分担を決めておかないと、建物のメンテナンスが遅れがちになる
生活にかかるお金 共有スペースがあるため、光熱費を2軒分より安く抑えることができる

ご近所との交際費も同様
家計の分担を決めておかないと、入居後のトラブルのもとになりやすい

他の兄弟とあらかじめ話し合っておかないと、将来、親の扶養、介護に必要な費用の分担で問題が生じやすい【子】

 

  仮に親世帯と子世帯の二世帯住宅だとすると、例えば土地は誰のもので、建築資金は誰がどんな割合で負担し、登記は誰と誰の名義にするか、といったことと、玄関は一つなのか2つなのか、共有部分がどれだけあるかなどが密接に関わり合ってくるので、よく話し合って決めなければなりません。


二世帯住宅の建物登記
単独登記 1人の名義で登記する方法 一般的に1人で資金を出した場合は、ほとんどこの形をとる
共有登記(持ち分登記) 出資した複数の名義で登記する方法 建築資金を出資した比率で登記する 所有部分は限定できない
区分登記 各戸それぞれの名義で登記する方法 所有部分の限定が可能 2つの条件を満たしていること
(1) 構造上の独立 各世帯の所有部分が、壁、床、天井などで完全に遮断されていること
(2) 機能上の独立

相手世帯の所有スペースを通らずに外へ自由に出入りができる

  二世帯住宅の場合、建物の登記は3タイプ、建物の形は4タイプあります。

二世帯住宅のタイプ
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  お金に関することなどは、その家に住む限りずっと付いて回る問題ですし、トラブルが起きたら、それぞれの世帯に責任があります。融資を利用するときも、生活のどこにポイントを置き、どんな住まいにするのか、資金は誰がどの程度だすのか、返済は誰がどれだけするのかなどをきちんと家族で話し合い、金融機関に相談することをおすすめします。

精神面

  精神面でのメリット・デメリットは、主に次の2つです。
  ○気持ちの問題
  ○習慣の問題

メリット デメリット
安心感
世代間の助け合い
家事の助け合い
子育ての安心感
子供の心の安定
視野の拡大
季節行事の継承
近隣、親族との付き合い
生活サイクルの違い
生活習慣の違い
時代背景の違い
干渉とプライバシー
子育て方針の違い

  これらの問題はメリットとデメリットが背中合わせになっています。たとえばメリットとしての「世代間の助け合い」は、時によっては手助けにも干渉にもなり得ます。これは日常的に体験することで、なにも二世帯に限ったことではありません。
  大切なことは、「ありがとう」や「ごめんなさい」など、素直に言葉でコミュニケーションがとれる関係を、普段から築いておくことです。こうした良好なコミュニケーションがあれば、生活習慣が自然に子や孫に伝承できるのが二世帯の大きなメリットです。
  さて、実際に生活が始まって気づく生活習慣や生活サイクルのズレは、大きなデメリットの一つです。ある程度覚悟をした上で、妥協できることはお互いに歩み寄ることで解決の道を探りたいものです。

多世代住宅のタイプ

  二世帯住宅での建物のタイプは、大きくわけて、「玄関1つ」と「玄関2つ」があり、さらに建物内部の分け方で4タイプになります。
 ○玄関1つ
  ・共有タイプ
 ○玄関2つ
  ・上下分離 内階段タイプ
  ・上下分離 外階段タイプ
  ・連棟分離タイプ

玄関がひとつの共有タイプ

  単なる「同居タイプ」も玄関が一つですが、ここでは中で分かれている「共有タイプ」について考えます。
  このタイプは、水回りの組合せでいろいろなプランが考えられます。
  たとえば、
  ・玄関だけが共有で、居室の他、トイレ・浴室などすべてが分離しているプラン
  ・浴室・洗面のサニタリースペースのみ共有し、居室とトイレは分離したプラン
  ・浴室・洗面の他、LDKも共有しているプラン
  ・居室以外は全て共有のプラン
子どもの年齢や二世帯の交流の深さで、生活スタイルに応じたプランを練りましょう。

玄関共有型

  ・生活サイクルが違ったり、不規則な世帯向け
  ・玄関ひとつのタイプの中では、最も独立している
  ・外観は、一軒のようにみえる ・固定資産税の控除は1戸分

玄関・浴室・洗面共有型

  ・入浴時間をずらしての生活がスムーズなら、水回りが共有できることで建築コストを抑えることができる
  ・日常生活の独立をほぼ得ることが可能で、自然な交流が保てる
  ・固定資産税の控除は1戸分

共同生活型

  ・子どもの年齢が低い間や、朝の忙しい時間、休日などの過ごし方を、各世帯のペースで過ごすことができる
  ・食事の嗜好の問題も解消できる
  ・浴室の位置によっては、親世帯の高齢化に配慮しやすい
  ・固定資産税の控除は1戸分

完全同居型

  ・昔ながらの同居スタイル
  ・共有スペースとプライベートスペースをはっきりと区別することが大切
  ・固定資産税の控除は1戸分

玄関がふたつ

  玄関2つのタイプは、各世帯を完全に分離することも、内部で交流を持たせることも可能です。

上下分離内階段タイプ

  通路付きになるので、そのドアの位置にも配慮が必要です。お互いに独立していますが、交流は比較的とりやすいパターンです。
  ・互いに独立しているが、交流はとれるタイプ
  ・通路に設けるドアの位置を考慮して、精神的負担を軽くする工夫が必要
  ・固定資産税の控除は2戸分(条件については要相談)

上下分離外階段タイプ

  完全な独立型も可能ですが、浴室や洗面を共有することで交流を図り、水回りのコストを押さえることも可能です。
  ・外観的には2軒
  ・玄関2つでは、最も交流しやすいタイプ
  ・水回りの共有で、建築コストを抑えられる
  ・固定資産税の控除については、各市町村窓口に問い合わせを

連棟分離タイプ

  屋根は1つですが、完全にお隣さんといった感覚です。建築費は2棟建てるより節約でき、フラット35の適用も受けられますので、親が健康ならおすすめのタイプです。
  ・屋根はひとつで、上下または左右に分かれて住むタイプ
  ・親世帯が健康で、独立した生活を望む場合に適している
  ・独立性が高いため、将来賃貸に回すことも可能
  ・フラット35が適用になる
  ・融資については、各機関に問い合わせを
  ・固定資産税の控除は2戸分

計画する時のポイント

  多世帯住宅を計画するとき、知っておくと便利なポイントがあります。これらを頭の隅に置いて図面を眺めると、いろいろとアイデアも浮かんできますよ。

間取り・動線

  共有スペースを中心に、それぞれの世帯が交流しやすいか、動線を追って考えてみます。共有スペースは、できるだけ各世帯のプライベートスペースを通らないで使えるようにしたいものです。さらにちょっとした息抜きのための、趣味や家事のスペースを確保するのもいいことです。

上下階の配置

  生活に関する配慮が必要です。たとえば子世帯が2階に住む場合や、各世帯の生活サイクルがずれているときは、次のような点にも注意します。
  ・2階の床に防音材を入れる(特に1階寝室の上など)
  ・水まわりは上下階で揃えておく

収納・ゴミ

  収納は次の3点に注意しましょう。
  ・各世帯に充分な収納スペースを取る
  ・季節のものなどを入れる共有収納を用意する
  ・適切な場所に設置する
  親世帯は、人生が長い分、大切な荷物が多いものです。ストーブやひな人形など季節のものは共有スペースへ収めます。ゴミは、自治体の分別収集の実態に合わせて、余裕を持った設計にし、誰にでも分別がしやすいようにしておきましょう。

さまざまな部分の高さ

  ちょっとした高さは、改善すると非常に便利になることがあります。
  ・玄関の上がりかまち ・キッチンのカウンター
  ・吊り戸棚
  ・いすやテーブル
  ・便座
  ・浴槽のリム(縁)の立ち上がり
  ・洗濯物干し
  これらは、世帯ごとに体格にあったものを選ぶ、というのは難しいかもしれません。しかし長い年月、つきあうものですから、できるだけ体にあったものを考えておくよう、心がけたいものです。

その他

  多世帯住宅とはいえ、念願の我が家です。自分たちの家という感覚が欲しい場合はこんな工夫もおすすめです。
  ・表札を世帯ごとに掲げる
  ・電気やガスのメーターを世帯ごとにわけて取り付ける。
  ・水道もどちらかに小メーターを取り付ける
  ・電話回線を世帯ごとにする
  ちょっとしたことですが、独立した生活のアウトラインが決まる上、経費もはっきり見えやすくなるので、計画段階での検討をおすすめします。